最近さぼりがち

質的研究入門―「人間の科学」のための方法論

質的研究入門―「人間の科学」のための方法論

 調査法の基礎文献として真っ先に挙げられる本。先月ようやく読みはじめた。必要なところだけまず。調査にあたって、調査法そのものの理論的立場を明確にすることの重要性や、「彼らがこう言っている」=「彼らはこう考えている」とは決して言い切れないということがいろいろな角度から何度も書かれていて、実際行くまでにきっちり読み込んでいこうと思う本。



ラブホテル進化論 (文春新書)

ラブホテル進化論 (文春新書)

 こちらは研究会でご一緒した方のblogで見かけ、院生が書いた新書ということで読んでみた。この人の存在自体は、スポーツ紙などに取り上げられて既にかなり有名だったらしい。しかし真っ先に思い出したのは、デイリーポータルZ鑑賞シリーズのひとつ


 これは上記の本でいうとインタヴューの手法が主で、雑誌記事の調査と、おもに提供側に対するリアルなインタヴュー調査をうまくかみ合わせ、戦後から現代に至るラブホテル事情を一本の歴史として纏め上げている。これを参与観察で厚く語られたら非常に面白いと思うのだが、インタヴューでさえ調査にものすごく苦労した跡が書かれているし、おそらく無理なのだろう。自分ならできない。鉄道マニアの調査からも逃げてしまったし。


 落としどころが「日本文化」であることに妙な既視感を抱き、あれ?と立ち止まって考えたら、TOKYO STYLEを読んでちょっと欲しいなと思った↓の本と同じなんじゃ……と思ってしまったが、結論の力点が「現在」であることが大きなポイント、かもしれない。これからのラブホテルのラブはラブラブのラブだとか言ってる[p.196]し。なにより新書で、文章で描いたことにきっと意味がある。研究論文としてどんな方向から分析されるのか無限の可能性を考えられて楽しくなった。

Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学 (ストリートデザインファイル)

Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学 (ストリートデザインファイル)


 ただ、なんというか、れっきとした問題意識を持ち、きちんと手順を踏んでしっかりと調査をしても、テーマの柔らかさ(この人の場合は特に)と年齢と容姿如何で、調査対象から下に見られるという痛みすら武器にしているところに逞しさを感じた。綺麗な人は得だなあと思わなくもないのだが、それはそれで大変なんだろう。そのあたりが無自覚だといらっとくるが、たぶんわかって書いているから強い、と。