映画2

 書いたつもりで忘れていました。牧歌劇研究者と映画音楽研究者による解説という豪華なオプションで観た、『我が至上の愛〜アストレとセラドン〜』。ストーリーはいわゆるオペラやバレエにありがちな、ありえない大掛かりなただの痴話喧嘩です。


 17世紀のフランスで上流階級の女性に広く読まれたという、5世紀(ローマ時代)の古代フランスの物語。流行したときは古代コスプレが流行ったということも教えていただきました。


 こういう映画を人と観ると、当然見るポイントが違うこと、しかしある程度共通の基盤があるからその差異を理解(しようと)して面白がれること、を学びました。とりあえず気になったことや学んだこと(以下若干ネタバレ?ばれようがなんだろうが関係ない作品だとは思うが)。

  • 全編を通して鳴っている「鳥の声」がおそらく無限ループである(リアルなロケ地の音ではない)。
  • 最初だけ「ドルイド」と訳出されているが、その後の字幕は「僧」(フランス語ではその後もドルイド呼び)。「ニンフ」は妖精や神ではなく、神から治世を託された人間であるとわざわざ説明するシーンがある(ここは原作にないらしい)。
  • →それで思い出したのだが、ケルト系のファンタジーで、「神が天に還るときに、現世を託した相手が現在の王族」という設定があった。ガリアはケルト系らしいので、世界観としては近くてもおかしくない。
  • 「神」や、メインテーマである「Fidelity」について意味深に語るシーンだけ何か別のスイッチが入ったようになる。ローマ・ガリア時代に仮託した、17世紀キリスト教と信仰の価値観に、多分9.11以降の現在に対する視線的ななにかが被さっているのでは、という見解。
  • それに対して、テーマの一端である「愛」をオブジェクトの扱いで語るのは、やはりキリスト教圏の価値観なのか?私は20世紀生まれで、翻訳小説も普通に読んできたのに、どうしても、日本語の名詞で使われる「愛」という語に慣れません。
  • 「美少年が女装して女子社会に潜入」というモチーフは、私は少女漫画でだいぶ親しんだが、そのルーツもヨーロッパの大衆小説なんだろうかという疑問。単に「ベタ」なだけ?
  • (なのに「どうみても男」なルックスの人を持ってくるのは「あえて」なのか?)


といった感じでした。おそらく一人で観るよりもだいぶ楽しかったです。