展示の裏側

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

 学部生のとき図書館の新刊書コーナーで見つけて、一気読みした記憶。19世紀のアメリカで、イヌイットを強制的に連れ帰った探検家と人類学者―Franz Boasらの大御所―が、その遺骨を博物館に展示したまま埋葬を許さなかったのだ、という告発ノンフィクション。


 当時は、Boas=アメリカの初期民族音楽学に影響を与えたフィールド系研究者、という認識でしかなかった(その後院試のときに知名度の差に愕然とする羽目に)。ジャーナリスティックな視点から「人権」の問題や「人類学」の孕む欺瞞の問題を提示され、当時はやはり「研究者・博物館」サイドに対して批判的な感想を抱いたように思う。そして今でもどこかで尾を引いて、「異文化の展示」に対してワンクッション置こうという感覚が残っている(ほぼ毎日見てるにもかかわらず)。

 専攻を移ってから、この本について誰かと話した記憶がほとんどないのだが、専門家の中ではどう読まれているのだろう、そして、今読むとどういう感想を抱くだろう。もう一度読み直してみようと思った。


 ……最も置くべきと思われる国立の某博物館に所蔵されてないじゃないですか。取り寄せかー。


Give Me My Father's Body: The Life of Minik, the New York Eskimo

Give Me My Father's Body: The Life of Minik, the New York Eskimo

 ↑原書なら売っているみたい。