予習
- 作者: フィリップ・V.ボールマン,柘植元一
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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概要
日本でいうところの「民族音楽学」、訳者いうところの「音楽民族学」、その対象としての「世界音楽」及びグローバリゼーションに伴って世を席巻する「ワールドミュージック」をめぐる議論。現在の関心からは、一番惹かれたのは第一章の概念や意味の部分。
第一章:世界音楽における神話と意味
- 「「音楽」の語が世界のあちこちで異なった意味をもっている(中略)それがほとんど無限の多様性の中で何を意味するのかを理解したければ、わたくしたちは異なる存在論と認識論を考慮に入れることが大切なのです。音楽の認識論といういいかたでわたくしたちは、音楽が全体としての文化の一部でありうること、したかって、音楽が他の活動との関連において意味を獲得しうることを意味します」(pp.36-37)。
- 「音楽にかかわる西洋の存在論」……音階と旋法を用いること、とすれば、コーランはコンテキストから切り離されて「音楽」とみなされることになる。
- 「世界音楽の認識論と存在論の全容は、音楽についての語り口と、音楽に意味を与えるための言葉の中に浮き彫りにされているのです」(pp.38)。
- 音楽を音楽たらしめる普遍的なものがあると信じるか、それとも音楽が示す差異に着目するか?(研究者の姿勢)
- 音楽のもつ力:改宗の動力、音楽解釈の力学
第二章:西洋と世界
- 記録と録音:調査者と被調査者の力関係;象徴としての録音機器;「力の利用と濫用」(pp.61)
- 西洋/非西洋という対立とそれを塞ぐための努力と要請
第三章:神話と歴史のあいだ
- 1932年のカイロ・アラブ音楽会議におけるエピソード:アラブ音楽へのヨーロッパとアラブ自身の意思の差異
- ヨーロッパ側:現在のヨーロッパ音楽に影響をもたらした伝統的なアラブ音楽をそのまま保存すべきだ
- アラブ側:過去の偉大な栄光を背景に、アラブ音楽が今後世界の音楽において躍進するために西洋の楽器や録音技術を応用すべきだ
第四章:民衆の音楽
第五章:国家の音楽
- 「国家」とナショナリズムと音楽
- 「音楽はその遂行性ゆえに、国家を強力に方向づけるのです。音楽のこの遂行性を説明するのに、ベネディクト・アンダーソンは「ユニゾナンス」という用語を造語しました。国民が総出で一つの奏楽を分かちあうときに生じる音響的瞬間です」(pp.151)。→自覚の有無にかかわらず、歌い手は国中の他者と一つになれる
- 国民音楽の集団性:「合唱」を用いてナショナリズムを高揚させることの自然さ(団結性)
- 国歌を「聴く」人がいるのか?「国歌らしく」どの国の国歌も同じように響くものなのか?
第六章:ディアスポラ(離散、他国への移住者)
- 他国へ移住し、マイノリティになった人々が生み出す「音楽」。レゲエ、ヒップホップもその一例。
第七章:コロニアル音楽、ポストコロニアル世界、ワールドミュージックのグローバル化
- 都市の音:ストリートミュージシャンの「選択と移動」ローカルでもグローバルでもある存在、ワールドミュージックとフォークミュージックの差異を崩壊させる存在
- 「複製技術時代」の音楽、録音、研究
- 「ローカルな、民族的な、人種的な、宗教的な違いを解消した、一つの理想郷」(pp.224)