小泉資料室の件

 香港に着いてから、東京藝術大学小泉資料室存続の危機を救え、というメール及び記事が流れていることを知った。びっくりした。だって、中国で小泉室担当の先生とずっと一緒に行動していたのに、並みいる音楽関係者を前に、そんな話はひとことも聞かなかったのだ。そもそも先生はそのように、突然チェーンメールと間違えられるような行動に出る方ではない。


 どうやら、中国でのシンポジウムの間に、先生に了承を得たものとしてメールが広まってしまっていたらしい。活動の趣旨自体には私も全面的に賛成するし、いずれ会議がもたれるという話は中国で聞いた(ただし17日というのは誤りらしい)。

 
 会議が近いとはいえ、なぜこのタイミングなのか。小泉室の存続自体は、校舎の解体・新築がはじまったここ1,2年かなり危ぶまれていた。私が中国語をたどたどしく読んでいた旧小泉室はもうなくなってしまった(覚えた中国語も忘れてしまった)。芸大内の助手のポストは小泉室に限らずどんどん縮小されている。この一件で、学内外にかなり波紋が広がっているということだった。


 見切り発車で行動を起こしたこと、小泉室への熱意は伝わってくる。だが、方法は適切だといえるだろうか。私は、これでは頭の固い大学側に、チェーンメールとして判断されてマイナスになりかねないと思うのだ。学外の人の反対意見を集めることが、解体へのブレーキになるという着眼点自体は正しいと思う。しかし、もう少し正当な手順と段階を踏むべきだったのではないか……

 
 この不安が杞憂に終わり、小泉室とその蔵書・所蔵品がきちんと保存されることを望んでやまない。